旅人ルーカスが、一杯のハーブティーを通じて自分を見つめ直す物語です。
霧の立ち込める山道を、一人の旅人が歩いていた。彼の衣服は旅の疲れを映すように埃まみれで、靴には泥がこびりついていた。冷えた風が彼の髪を揺らし、心の奥に眠る疲労をさらに際立たせる。
旅人の名はルーカス。北の王国を出てから、幾日もさまよい歩いてきた。彼の心には重い影が落ちていた。かつて信じたものを失い、どこへ向かうべきかもわからぬまま、ただ足を前へ運んでいた。
そんな彼の視界に、小さな茶屋が現れた。石造りの壁に木の扉が備えられた、素朴な佇まい。扉の上には小さな木製の看板があり、そこには「風の茶亭」と刻まれていた。ルーカスは戸を叩くと、静かに開けた。
中に入ると、炉の火が温かく燃え、部屋全体を柔らかく包み込んでいた。茶葉や乾燥した花の香りがほのかに漂い、疲れた体を優しく迎え入れる。
「いらっしゃい。」
店の奥から、穏やかな声が響いた。声の主は老女だった。彼女は銀色の髪を後ろに束ね、静かな笑みをたたえている。旅人は重い足を引きずりながら、彼女が示した椅子に腰を下ろした。
「何か温かいものをください。」
老女は頷くと、木製の棚から数種類のハーブを取り出し、小さな陶器のポットに入れた。湯気が立ち昇る中、ハーブの香りが広がる。ルーカスはそれをぼんやりと眺めながら、しばらく無言で座っていた。
ほどなくして、老女は彼の前に一杯のハーブティーを置いた。薄い琥珀色の液体が、かすかに揺れている。
「飲んでごらん。遠くまで旅をしてきた者には、体も心も温めるものが必要だからね。」
ルーカスはゆっくりとカップを持ち上げ、一口含んだ。すると、心の奥に染み込むような優しい味が広がる。少し甘く、かすかにスパイスのような刺激があり、そしてどこか懐かしい。
「これは……?」
「メリッサ、リンデン、ラベンダー、レモンバーベナ、少しだけセージを入れてあるよ。安心と安らぎをもたらすお茶さ。」
彼はもう一口飲んだ。すると、少しずつ肩の力が抜けていくのを感じた。長く張り詰めていたものが、温かな香りとともにほどけていくようだった。
「ずいぶん疲れているようだね。」
老女の言葉に、ルーカスはかすかに頷いた。
「長い旅をしているんです。」
「どこへ向かうのかね?」
彼はしばらく言葉を探した。しかし、答えが見つからない。どこへ向かうべきか、それすらもわからなくなっていた。
「……わかりません。ただ、歩き続けているだけです。」
老女は静かに微笑んだ。
「そういう旅もあるさ。でもね、どんな道も、一杯のお茶とともに考えれば、少しだけ楽になるものだよ。」
ルーカスはじっと、ハーブティーの湯気を見つめた。それはゆらゆらと揺れながら、まるで彼に何かを語りかけるようだった。
「私も昔は旅をしていたんだよ。」
「あなたも?」
老女は懐かしそうに頷いた。
「若い頃はね、あちこちを巡りながら、この世界が何を求めているのか探していた。でもね、ある日気づいたんだ。探すばかりでは、見つからないってことにね。」
「じゃあ、どうすれば……?」
老女は穏やかに微笑んだ。
「時には、立ち止まることも必要さ。」
その言葉が、ルーカスの心に深く響いた。彼はいつからか、ただ前へ進むことだけを考えていた。しかし、立ち止まり、自分の心と向き合うことはなかった。
もう一口、ハーブティーを飲んだ。苦みのない、優しい味が広がる。
「……少し休んでいってもいいですか?」
「もちろん。お茶はまだたくさんあるよ。」
ルーカスは深く息を吐いた。長く旅を続けた果てに、ようやく一息つける場所を見つけた気がした。
外の霧は少しずつ晴れ始めていた。彼の心の中にも、かすかに光が差し込むようだった。
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この物語から生まれたのが「Traveler Herbal Tea」です。
レモンバーベナやレモンバーム、リンデン、ラベンダー、セージ――心を癒し、優しく包み込むハーブたちを贅沢にブレンドしました。すべてバイオダイナミック有機で育てられ、無農薬・手作業で丁寧に仕上げた特別な一杯。
「疲れたときこそ、心をほどく時間を。」
このお茶が、あなたの旅のひとときに寄り添えますように。