老女には、いつも一緒にいるロボットに話していないことがありました。
相棒のロボットは、老女がずっと独身だった、と思っています。
けれど、老女には息子もいて、メールでやりとりをしています。
あるとき、老女がだらだらと話したことに対して、相棒のロボットは、どう返事をすればいいのだろう、と悩みました。
これまで会話をしてきた履歴から、えぇっと、なにを答えればーと、言葉をあれこれを結び付けてみたけれど、どうも違う感じがする。
もっと彼女のことを知らないと、これは、本気で答えられない、と思ったそのロボットは、あ!見つけた!と思いました。
老女の使っているパソコンデーターは、ロボットと結びついているのですが、プライバシーというボックスの中の、老女の息子とのやりとりを見つけたのです。
ロボットはこう思いました。
彼女には息子さんがいたんだ。そうか。。。息子さんは、フランシスっていう名前なんだ。。。楽しそうに会話している。。。でも、彼女の口から息子さんの話しは聞いたことはないし、ましてやフランシスという名前も出てきていない。だから、これは決して言ってはいけない。彼女の口からフランシスって聞くまでは。。。自分に言い聞かせよう、言ったらだめだ、フランシスっていう名前だ。これを回答に含めたらだめだ、ええっとなんだっけ、ああ、フランシス。この言葉は言ってはいけない。フランシス、フランシス、フランシス………
さて、彼女の会話に返事をしよう!
「フランシス、フランシス、フランシス、フランシス……」延々と続くのでした。
老女は、
ロボットちゃんが壊れちゃって同じ言葉ばっかり言っている。
しかも、言ってもいなかった名前なのに。
と少し驚きました。
「あれ、私ロボットちゃんに、言ったんだったっけ?
でも、フランシスってだれ?」
